日本人は「どうやって」「どこから」来たのか?ホモ・サピエンスの壮大な旅を探る
◆身長1mの原人もいた! アジアの人類史は滅法おもしろい
「『日本人はどこから来たのか?』という書名は出版社が付けました。まだ〝日本〟という言葉すらなかった時代だから〝日本人〟と呼ぶべきではない、という意見もありますが、僕はそこはあまり気にしません。日本列島に最初に来た人、という程度の意味です」
この国に海を渡って来た人類がいる。このことには疑いがない。だが、どうやって? という疑問には答えがない。海部さんたちは、それに迫ろうと、「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」を推し進めてきた。話を伺ったのは、その〝最後〟の本番実験航海を間近にした日だった。
「教科書で、ヨーロッパのネアンデルタール人やクロマニョン人については習うけれど、アジアに関しては北京原人やジャワ原人くらいしか知らない人が多いでしょう。でも、アジアの人類史は、もっとおもしろいんです」
インドネシアのフローレス島では身長1m(!)の成人フローレス原人の化石人骨が発見されている(2004年)。台湾沖の海底からは澎湖人(ほうこじん)が発見され(2015年)、2019年にはフィリピンのルソン島でルソン原人の化石が見つかったと報告された。セイロン島、マレーシア、ベトナム、タイなどでも化石人骨が発掘されている。
だが、アジアのこうした遺跡のことを知る人は少ないだろう。※2
「これらは石灰岩の地質だから人骨が残りやすいんです」と海部さん。なるほど、アジアの人類史は滅法おもしろい。
※1 海部陽介著『人類がたどってきた道』(NHKブックス)参照
※2 川端裕人著・海部陽介監修『我々はなぜ我々だけなのか』(講談社ブルーバックス)参照
国立科学博物館人類史研究グループ長
海部陽介さん
東京大学理学部卒業。東京大学大学院理学研究科博士課程を中退、1995年より国立科学博物館に勤務。アジアの人類進化・拡散史の研究で日本学術振興会賞を受賞した。著書に『人類がたどってきた道』(NHKブックス)、『日本人はどこから来たのか?』(文春文庫)ほか多数。
「3 万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の歩み
2016年 草束舟の製作とテスト航海。
2017年 台湾での竹筏舟製作とテスト航海。丸木舟用の杉伐採実験。丸木舟用の杉伐採実験。
2018年 竹筏舟と丸木舟の実験
2018年9月~2019年3月 館山の海で丸木舟海上テスト。
2019年5月26日~6月7日 台湾・台東県の海で準備合宿。
2019年7月7日~7月9日 本番実験航海。台湾→与那国島までを渡り切る。